
『LENSBABY Composer』
最近、欲しいレンズがなかったのだが、これはおもしろい。意図的にボケや流れを作って日常をアートに変える交換レンズだ。あなたのデジイチがHOLGAやLOMOに変身する!
トイカメラブームを反映して、各社のコンデジには、ミニチュア機能とかピンホールとかトイフォトフィルターなどが搭載されてきた。これはあくまでもデジタル処理でレトロな雰囲気を醸し出すハイテク技だ。マイクロフォーサーズのボディーに本物のレトロレンズを付けて撮るというマニアックな楽しみ方をする人もいる。焦点距離が倍になってしまうのが、広角好きとしては納得できない。いまさら銀塩の『Lomo LC-A』でもないし…… と思っていたらおもしろいモノがあった。『LENSBABY』である。もともと『ミューズ』というモデルがあったのだが、これがシンプルすぎて使いこなしが難しかった。
そもそも『LENSBABY』は、あおりを効かせるためのレンズだ。あおりとは大判カメラの蛇腹を使っておこなう操作で、商品撮影や建築撮影のときにモノや建物がレンズによって歪むのを補正するための手段だった。一眼レフ用にもシフトレンズと呼ばれる特殊な交換レンズがあり、これを使うとあおりが効く。簡単に言えば超広角レンズを使うと建物にパースがついて上がすぼまって撮れることがある。これをあおることで垂直に戻せるのだ。最近ではこのレンズを使って、わざとピントが合った部分以外をボケさせてミニチュア風の写真を撮るのが流行している。だからと言って気軽に買えるレンズではなく例えばキヤノンの『TS-E17mm F4L』という交換レンズは希望小売価格29万5000円もするのだ。確かにその佇まいは魅力的ではあるが……。話を戻すと、『LENSBABY』はシンプルな構成のレンズに蛇腹を付けることで1万円台であおりを実現している。この蛇腹を動かしてボケの位置を決めつつピントも合わせるのだ。ピントが合ったら手を動かさずにシャッターを切るというなかなか難しい作業が要求される。ところが今度の新製品、『LENSBABY Composer』はピント合わせ用に独立したピントリングを装備、さらにあおりは蛇腹ではなく、ボールソケット構造で実現した。これによりレンズの傾きを好きな位置で固定できるようになり、落ち着いて写真が撮れるようになったのだ。

マウントはキヤノンEOS用、ニコン用、ソニーα用、ペンタックス用、フォーサーズ用の5種類がある。ニコン『D200』のボディーに付けるとこんな感じになる。

そして今回、さらにレンズも用意した。実は『LENSBABY』は光学系交換レンズシステムを採用している。つまりレンズ交換できるのだ。といっても焦点距離が変わるわけではなくレンズの素材と構成が変わる。するとレンズの描写が変わってくるのだ。『LENSBABY Composer』には標準で「ダブルグラス」というレンズが付いている。黄色いリングが付いたレンズだ。これは1群2枚構成のガラス製レンズで、交換レンズの中で一番シャープに撮れるレンズだ。「シングルグラス」は山吹色のリングで、より柔らかい描写になるガラス製レンズ。そして水色のリングが「プラスチック」で、トイカメラに近いソフトというかボケボケな感じに撮れるプラスチックレンズである。焦点距離はどれも50mmで開放絞りはF2。そしてピンクのリングがレンズのない「ピンホール/ゾーンプレート」まで揃えてしまいどんだけ作例撮るんだよ〜 的なことになっている。

もう少し説明することがあるので、お付き合いいただきたい。これらのレンズには絞りがない。正確に言うと絞りは交換式である。黒いリングをレンズの前に取り付けるというプリミティブな仕組みだ。専用ケースに収められたF2.8、4、5.6、8の4枚の円盤を磁石の付いた器具で取り付けるのだ(写真にはないがコンポーザーはさらにF11、16、22も付属する)。非常に面倒なので一度絞りを決めたら、その日は1日その絞りで撮りたい気分になる。ちなみに私のニコン『D200』では絞り優先AEモードが使えるため、絞り固定のままAE撮影ができて非常に便利だ。

前置きが長くなったが、早速「ダブルグラス」のF2で撮影してみた。まずピントがどこに合っているかがよくわからない。AFの合焦を知らせてくれるグリーンのLEDの点灯をファインダー内で確認しながら撮った。こりゃとにかくF2は使いにくい。絞りはF4か5.6でいくことにした。

普通ならここで、流行のミニチュア風写真に挑戦! みたいな流れになるのだが、このレンズの焦点距離はD200で使うと75mmになるのだ。これで風景は撮るのは面白くない。75mmでソフトフォーカスとくればやっぱり、定番は女性ポートレート。別に定番を撮る必要はないのだが、ここはアクセス数アップを狙って、女子大生の綾子さんにモデルを依頼、ニーソックスをはいてきてもらった。神楽坂で待ち合わせて撮影スタート。
まず、ダブルグラスで絞りの変化をみてみよう。これが開放のF2である。あと段階を追って撮ったのだが省略して……

F5.6まで絞るとかなりピントはハッキリしてくる。なるべくレンズはあおらず水平に近くしているのだが周囲はかなりボケていることがわかる。

やっぱり絞りはF5.6に決めた。次はレンズの種類による描写の違いをお見せしよう。これがシングルグラスレンズである。右側がボケるように撮っている。

これをプラスチックレンズにするとかなり凄いことになる。明るい場所ではボケすぎて使いづらい感じだ。

せっかくなのでゾーンプレートもここで登場させた。絞りは固定でF19になる。このレンズはピンホールの仲間なので、穴の直径が小さいほどピントがシャープだ。かなり大きな穴なのでものすごいフレアが出てホワホワした写真になった。

次はF177相当のピンホールレンズでの撮影。シャッター速度は0.7秒だ。すごく絞っているためCCDに付いたゴミが黒い点になって写っている。ピンホールを使いたい方はまず撮像素子のクリーニングが必要なのである。

レンズをダブルグラスに戻して、絞りはF5.6にしたままで神楽坂の裏道をうろうろしてみる。しかし、これがなかなか簡単にはスナップできない。なぜなら、撮影するまでに
1.ピントを合わせる
2.レンズを傾ける
3.もう一度ピント合わせ
この3行程が必要なのだ。これは結構、面倒である。普通ならAFでサクサク撮れるからねえ。この不便さを楽しむ心のゆとりが求められるのだ。

すぐに心が折れてしまい、レトロな作りの喫茶店に避難した。二階に上がると猫がいた。 すかさず撮ったのだが、絞りがF5.6固定なのでシャッター速度は1/13秒、ブレてなければいいのだがと祈りつつ、あと猫動くな!

落ち着いたのでガラスのシングルレンズにレンズ交換した。絞り開放だと気分は印象派。 ISO400で1/40秒、F2.0である。

F2.8でもかなり柔らかい描写で暗い室内ではますますピントの山がわかりにくい。ともかくあおらなくてもこの辺りの絞りならソフトフォーカスになる。

F4だとシャッター速度は1/8秒になり、手ブレや被写体ブレが気になる領域に突入。綾子さんにもじっとしているように頼んだぐらいだ。


これ以上、絞れないので撮影終了。屋内や夜景の撮影には三脚を持っていった方がいいね。または高感度に強いボディーを使うとか。しかし、75mmは私にはかなり使いにくい画角だった。なので綾子さんには超広角系ズームの時にまた来てもらうことにしたのだ。せっかくなので最後に『D-LUX4』で撮った24mm、F2.0、1/15秒(-0.33補正)のオフショットを載せておこう。

それで今回の結論なのだが、『LENSBABY Composer』はなかなかおもしろい。特に交換レンズを揃えなくても、付属レンズで充分遊べる。絞りはF4か5.6がオススメ。私的にはもっと広角だとおもしろいので「CP+」で参考出品されていた12mmの全周魚眼レンズの登場に期待。とにかくトイデジカメを買うよりおもしろい。絞るとちゃんと写るし、使いこなせばミニチュア風も撮れるのだ。
ケンコー『LENSBABY Composer』

【SPEC】
●最大径約57mm×全長63.5mm、約104.9g。フィルター径37mm。オープン価格。
■ケンコーのホームページ
http://www.kenko-tokina.co.jp/
■『LENSBABY』の製品ページ
http://www.lensbabies.jp/index.html

川野剛
カメラマンに憧れ中1で押し入れ暗室にこもる。高校で写真部部長。コピーライターとなるが、会社を辞め単身カナダに渡りアウトドアインストラクターを目指す。帰国後、AV、家電、デジカメ、Macの好きなライター稼業を続ける。家事検定3ツ星、NPS会員。
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そして今回、さらにレンズも用意した。実は『LENSBABY』は光学系交換レンズシステムを採用している。つまりレンズ交換できるのだ。といっても焦点距離が変わるわけではなくレンズの素材と構成が変わる。するとレンズの描写が変わってくるのだ。『LENSBABY Composer』には標準で「ダブルグラス」というレンズが付いている。黄色いリングが付いたレンズだ。これは1群2枚構成のガラス製レンズで、交換レンズの中で一番シャープに撮れるレンズだ。「シングルグラス」は山吹色のリングで、より柔らかい描写になるガラス製レンズ。そして水色のリングが「プラスチック」で、トイカメラに近いソフトというかボケボケな感じに撮れるプラスチックレンズである。焦点距離はどれも50mmで開放絞りはF2。そしてピンクのリングがレンズのない「ピンホール/ゾーンプレート」まで揃えてしまいどんだけ作例撮るんだよ〜 的なことになっている。

もう少し説明することがあるので、お付き合いいただきたい。これらのレンズには絞りがない。正確に言うと絞りは交換式である。黒いリングをレンズの前に取り付けるというプリミティブな仕組みだ。専用ケースに収められたF2.8、4、5.6、8の4枚の円盤を磁石の付いた器具で取り付けるのだ(写真にはないがコンポーザーはさらにF11、16、22も付属する)。非常に面倒なので一度絞りを決めたら、その日は1日その絞りで撮りたい気分になる。ちなみに私のニコン『D200』では絞り優先AEモードが使えるため、絞り固定のままAE撮影ができて非常に便利だ。

前置きが長くなったが、早速「ダブルグラス」のF2で撮影してみた。まずピントがどこに合っているかがよくわからない。AFの合焦を知らせてくれるグリーンのLEDの点灯をファインダー内で確認しながら撮った。こりゃとにかくF2は使いにくい。絞りはF4か5.6でいくことにした。

普通ならここで、流行のミニチュア風写真に挑戦! みたいな流れになるのだが、このレンズの焦点距離はD200で使うと75mmになるのだ。これで風景は撮るのは面白くない。75mmでソフトフォーカスとくればやっぱり、定番は女性ポートレート。別に定番を撮る必要はないのだが、ここはアクセス数アップを狙って、女子大生の綾子さんにモデルを依頼、ニーソックスをはいてきてもらった。神楽坂で待ち合わせて撮影スタート。
まず、ダブルグラスで絞りの変化をみてみよう。これが開放のF2である。あと段階を追って撮ったのだが省略して……

F5.6まで絞るとかなりピントはハッキリしてくる。なるべくレンズはあおらず水平に近くしているのだが周囲はかなりボケていることがわかる。

やっぱり絞りはF5.6に決めた。次はレンズの種類による描写の違いをお見せしよう。これがシングルグラスレンズである。右側がボケるように撮っている。

これをプラスチックレンズにするとかなり凄いことになる。明るい場所ではボケすぎて使いづらい感じだ。

せっかくなのでゾーンプレートもここで登場させた。絞りは固定でF19になる。このレンズはピンホールの仲間なので、穴の直径が小さいほどピントがシャープだ。かなり大きな穴なのでものすごいフレアが出てホワホワした写真になった。

次はF177相当のピンホールレンズでの撮影。シャッター速度は0.7秒だ。すごく絞っているためCCDに付いたゴミが黒い点になって写っている。ピンホールを使いたい方はまず撮像素子のクリーニングが必要なのである。

レンズをダブルグラスに戻して、絞りはF5.6にしたままで神楽坂の裏道をうろうろしてみる。しかし、これがなかなか簡単にはスナップできない。なぜなら、撮影するまでに
1.ピントを合わせる
2.レンズを傾ける
3.もう一度ピント合わせ
この3行程が必要なのだ。これは結構、面倒である。普通ならAFでサクサク撮れるからねえ。この不便さを楽しむ心のゆとりが求められるのだ。

すぐに心が折れてしまい、レトロな作りの喫茶店に避難した。二階に上がると猫がいた。 すかさず撮ったのだが、絞りがF5.6固定なのでシャッター速度は1/13秒、ブレてなければいいのだがと祈りつつ、あと猫動くな!

落ち着いたのでガラスのシングルレンズにレンズ交換した。絞り開放だと気分は印象派。 ISO400で1/40秒、F2.0である。

F2.8でもかなり柔らかい描写で暗い室内ではますますピントの山がわかりにくい。ともかくあおらなくてもこの辺りの絞りならソフトフォーカスになる。

F4だとシャッター速度は1/8秒になり、手ブレや被写体ブレが気になる領域に突入。綾子さんにもじっとしているように頼んだぐらいだ。


これ以上、絞れないので撮影終了。屋内や夜景の撮影には三脚を持っていった方がいいね。または高感度に強いボディーを使うとか。しかし、75mmは私にはかなり使いにくい画角だった。なので綾子さんには超広角系ズームの時にまた来てもらうことにしたのだ。せっかくなので最後に『D-LUX4』で撮った24mm、F2.0、1/15秒(-0.33補正)のオフショットを載せておこう。

それで今回の結論なのだが、『LENSBABY Composer』はなかなかおもしろい。特に交換レンズを揃えなくても、付属レンズで充分遊べる。絞りはF4か5.6がオススメ。私的にはもっと広角だとおもしろいので「CP+」で参考出品されていた12mmの全周魚眼レンズの登場に期待。とにかくトイデジカメを買うよりおもしろい。絞るとちゃんと写るし、使いこなせばミニチュア風も撮れるのだ。
ケンコー『LENSBABY Composer』

【SPEC】
●最大径約57mm×全長63.5mm、約104.9g。フィルター径37mm。オープン価格。
■ケンコーのホームページ
http://www.kenko-tokina.co.jp/
■『LENSBABY』の製品ページ
http://www.lensbabies.jp/index.html
川野剛
カメラマンに憧れ中1で押し入れ暗室にこもる。高校で写真部部長。コピーライターとなるが、会社を辞め単身カナダに渡りアウトドアインストラクターを目指す。帰国後、AV、家電、デジカメ、Macの好きなライター稼業を続ける。家事検定3ツ星、NPS会員。
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